第26回東京国際映画祭クロージングセレモニーが10月25日に行なわれ、東京 サクラ グランプリを始めとする各賞の受賞作品と受賞者が発表された。
◎日時・場所: 10月25日(金) 18:05〜
◎会場: 六本木ヒルズ スクリーン 7
【コンペティション】
・東京 サクラ グランプリ 東京都知事賞 『ウィ・アー・ザ・ベスト!』 (監督:ルーカス・ムーディソン)
・審査員特別賞 『ルールを曲げろ』 (監督:ベーナム・ベーザディ)
・最優秀監督賞 ベネディクト・エルリングソン (『馬々と人間たち』)
・最優秀女優賞 ユージン・ドミンゴ (『ある理髪師の物語』)
・最優秀男優賞 ワン・ジンチュン (『オルドス警察日記』)
・最優秀芸術貢献賞 『エンプティ・アワーズ』 (監督:アーロン・フェルナンデス)
・観客賞 『レッド・ファミリー』 (監督:イ・ジュヒョン)
【アジアの未来】
・作品賞 『今日から明日へ』 (監督:ヤン・フイロン)
・スペシャル・メンション 『祖谷物語 −おくのひと−』 (監督:蔦哲一朗)
【日本映画スプラッシュ】
・作品賞 『FORMA』 (監督:坂本あゆみ)
◎日本映画スプラッシュ部門の作品賞には、映画監督を目指して熊本から上京した坂本あゆみ監督の長編初監督作品『FORMA』が選ばれた。
クリスチャン・ジュンヌさんが審査委員を代表して、「8本の作品を審査しました。どの作品からもエネルギーを感じとることができました。受賞作品は、ビジュアルも物語も豊か」と讃えた。
坂本あゆみ監督は、「このような賞をいただき胸がいっぱいで言葉が出ません。6年前に製作を始めたのですが、体調を崩したりと、6年もかかって作りました」と涙の止まらない受賞となった。
◎アジアの未来部門では、ジェイコブ・ウォングさんが今年の東京国際映画祭でこの部門がリニューアルされたことを称し、「この賞があってもなくても、これからも若手のフィルムメーカーには、自分が作りたいと思う映画を作ってもらいたい」とコメント。
続いて、釜山と東京の二つの国際映画祭の審査委員を務められた青山真治さんから、「二つの国際映画祭を通して20本の映画を見ましたが、笑える映画がひとつもありませんでした。問題意識を追求するために最も観客にアピールするのは、笑いである」と述べた上で、「二本選びました。作品賞は一本ですので、もう一本は、スペシャル・メンションとしました。『祖谷物語−おくのひと−』です。
作品賞は、『今日から明日へ』です」と発表した。
トロフィーを受け取ったヤン・フイロン監督は、「ありがとうございます」とトロフィーを掲げ、全身で感激を表した。
◎コンペティション部門では、まず、今朝発表された観客賞作品『レッド・ファミリー』のイ・ジュヒョン監督と出演者の皆様を再びステージで紹介された。
イ・ジュヒョン監督は、「キム・ギドク氏の素晴らしい脚本とここにいる素晴らしい俳優に感謝します。作品からのメッセージが観客に伝わっていると感じていましたが、この賞がそれを証明してくれました」と改めて喜びの言葉を述べた。
◎最優秀芸術貢献賞に選ばれた『エンプティ・アワーズ』について、審査委員長チェン・カイコーさんは、「受賞作品は素晴しい青春映画。愛と、大人の世界を初めて知る喜びに満ちた作品」と称した。
アーロン・フェルナンデス監督は、既にメキシコでのプロジェクトに着手しているため、本作品のセールスエージェント、そして監督の友人であるフレデリック・コルヴェス氏が代理で受賞し、その後フェルナンデス監督からのビデオメッセージが紹介された。
「コンニチハ!先ほど素晴らしいニュースをいただきました。本当に嬉しいです。今回の受賞には、特別な意味があります。製作チームが初めて受賞した賞だからです。東京で私の代わりにお酒を飲んで祝ってください!」
◎寺島しのぶさんは、「素晴らし演技というものは、スクリーンに人物の息づかいを生み出すものです。一人の人間を何年もの間に渡って描くことほど、難しいことはありません。役に欠点や強さや思いやりを与えつつ、一個の人格として立ち上げることができれば、真に優れた演技と言えるでしょう」と述べ、最優秀男優賞の受賞者を発表した。
トロフィーを受け取ったのは、『オルドス警察日記』で過労死した警察官を、体重を10キロ以上落として演じられたワン・ジンチュンさん。「監督が頑張ってくださったおかげで、この賞を手にしています」と会場にいるニン・イン監督に敬意を表した。
「私は、家族を愛し、友人を愛し、映画を愛しています。翼をいただいた気分です。世界を照らす翼です」。そして最後に、「今、言っておかないと帰ってから怒られるので」と会場にいた奥様に感謝の言葉を述べ、会場の笑いを誘った。
◎最優秀女優賞は、ムン・ソリさんが発表。「素敵な女優さんばかりで、その熱演を見ることができてよかったと思います。その中で、特にこの賞を受賞される方は、私たちを困難な旅に連れて行ってくれました。虐げられた妻に始まり、最後は革命家になりました。愛情と哀愁と悲しみを見事なバランスで演じきっておられました。私もこの方に早くお目にかかりたいです」と讃えた。
『ある理髪師の物語』で主演したユージン・ドミンゴさんは、満面の笑みでゆっくりと登壇し、「緊張しています。思いも寄らない受賞で、賞金もいただけるなんて!この賞をとても重要な方と共有したいと思います。皆さん、信じられないかもしれませんが、実は私は喜劇役者なんです。電気も電話もないみじめな気持ちになるような現場の撮影に私を呼んでくださった、本作品の監督であるジュン・ロブレス・ラナさんに感謝します」と監督やプロデューサー、スタッフに感謝の気持ちを、ユーモアたっぷりに表現した。
◎最優秀監督賞は、クリス・ワイツさんが発表。『馬々と人間たち』のベネディクト・エルリングソン監督は、トロフィーを頭の上に掲げ、「重要な賞です。これは私だけでなく、クルー、スタッフ、ミュージシャン、出演者、そして馬たちのものです。馬たちに言いたいのは、ヒヒーン!」と会場を沸かせた。
◎審査員特別賞について、クリス・ブラウンさんは、「審査員としては、作り手がホームグランドで問題定義する、または声を届けたいという作品に惹かれます。ですからその声を支援し、その正当性を確認できるということは重要です」と述べた。
『ルールを曲げろ』のベーナム・ベーザディ監督は、「この賞を、イランの若者、アーティストやレッドラインを超える勇気ある人々に捧げます」とペルシャ語でコメント。
◎栄えある東京サクラグランプリの受賞作品は、審査委員長のチェン・カイコーさんが、「最高賞には、卓越した完成度を求めました。情熱と魅力にあふれ、本物の人間の絆を、生き生きとしたエネルギッシュな演技で描いたこの作品に、審査委員は満場一致で決めました。『ウィ・アー・ザ・ベスト!』です」と発表。受賞作品のルーカス・ムーディソン監督には、東京都産業労働局長の塚田祐次さんから表彰状が、そして、フェスティバル・ミューズの栗山千明さんから麒麟像が贈呈された。
ムーディソン監督は、「思いもよらない受賞なので驚いています。東京国際映画祭に参加できるだけでも光栄ですので、本当に感無量です。私の妻であるココが、この原作を書きました」と、ココ・ムーディソンさんにマイクを渡した。
ココさんは、「私は、漫画家です。この映画を通して、すべての年齢の女性に音楽をやってみたい、と思ってほしいです」とコメントした。
◎最後に、審査委員長のチェン・カイコーさんは、東京国際映画祭の9日間を振り返り、「この一週間ほど、一生懸命審査委員の任務に当たりましたし、結果には大変満足しています。東京国際映画祭は非常にうまく組織され、運営もスムースでした。観客は情熱的で、スタッフの方々も協力的でした。東京は、若手の映画人の注目をもっと集めてもいいと思います。そうなると、東京国際映画祭にもっとたくさんの優れた作品が集まると思います」とコメントした。最後に来年の映画祭に向けて、日本語で「バイガエシ(倍返し)!」と言って、喝采を浴びた。
◎式の最後には、東京国際映画祭ディレクター・ジェネラルの椎名保が、「受賞者の皆様、おめでとうございます。第26回東京国際映画祭も今日が最終日となりました。台風と台風の間を上手く切り抜け、天候に恵まれた映画祭でした。もうひとつの台風は、閉会式が終わるのをじっと待っています」とコメントし、また、2020年オリンピックの東京開催が決まったことに触れ、「東京オリンピックまで7年。映画祭は、7回あります。一年一年積み重ねて盛り上げていきたいと思います。また来年、東京でお会いしましょう!」と締めくった。
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