東京・中野サンプラザ
作品概要
つまらないオトナにはなりたくない。 佐野元春 27歳、80年代初期の若き情熱を映した奇跡のドキュメンタリー。 オリジナル 1983年公開のフィルムを完全デジタル・リマスタリング化。
(C) 1983 Epic Records Japan Inc. |
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地域ばなし
1983年、「Rock & Roll Night Tour Special」として中野サンプラザ(東京都中野区)などで行われたライヴがフィルムに記録されています。
解説
『Film No Damage』はまだ MTVもミュージック・クリップも殆ど無かった時代、しかも映像を撮影する環境も今ほど揃っておらず、ビデオ機材もほとんど無かった頃に制作された作品だ。
全編 16mmフィルムで撮影され、多くの日数をかけて編集され完成した。
1980年代前半において、このようなクオリティとプロット・ストーリーを兼ね備えたロック・ドキュメンタリー・フィルムは、他に例を見ない。
撮影・監督は井出情児。彼は日本におけるロック・ドキュメンタリー映像作家の第一人者でありパイオニアと言える人物。佐野元春は自身のドキュメントを撮影して欲しいと、自ら井出情児に依頼し、完成したのが本作だ。
若き日の佐野元春は、いくつかのロック・ドキュメンタリーを見て感動した経験があった。
ザ・ビートルズの『レット・イット・ビー』(1970年)、『ウッドストック』(1969年撮影/ 1970年公開)、そしてザ・バンドの『ラスト・ワルツ』(1976年撮影/1978年公開年)だ。
多感な時期に見たこれら作品は、彼にとっての音楽映像に関する基本的な尺度となった。
1983年当時、27歳の佐野元春は、ドキュメンタリーとエンターテインメント性を兼ね備えた作品は日本には少ないと感じていた
(註:この前後の時期には、例えば有名なところでは『だからここへ来た 1970年全日本フォークジャンボリーの記録』(1970年)や、キャロルのドキュメンタリー『キャロル』(1974年)、甲斐バンドの『 THE BIG GIG』(1983年)などがあるが、ドキュメンタリーとエンターテインメント性の両方を兼ね備えた作品はほとんど存在しなかった)。
佐野元春はこの時期、その活動ベースを日本からアメリカへ移そうと考えていた。そして自分のキャリアもそう長くは続かないであろう、と感じていた彼は、デビューから 3年間のライヴを映像として記録しようと思い立った。
そこで井出情児に自ら制作を依頼、それを受けて井出情児も即座に佐野元春の考えを理解し、『Film No Damage』プロジェクトはスタートした。
『Film No Damage』は次に挙げる 3つのパートで構成されている。
1:1980年代初期のライヴ・コンサート・ドキュメント(1983年 3月「Rock & Roll Night Tour Final@中野サンプラザなど)からのライヴ・シークエンス。
2:オフ・ステージ・ドキュメント。
3:コメディ・シークエンス(ジョンとヨーコのベッド・インのパロディ)。
デビュー当時のエネルギーに満ち溢れた佐野元春と彼のバンド、ザ・ハートランドによるライヴ、そしてそれに呼応する新時代のキッズたち。その後に起こる、日本のロック・シーンの 1つの雛形が、そこにはあった。
さらに驚くべきは、このフィルムに収録されたコメディ・シークエンスだ。佐野元春自身が演出・構成したジョンとヨーコのパロディ・シークエンスで、その後の MTVやミュージック・クリップに繋がるスタイルが既にここにある。
併せて本作の中では、シングル「グッドバイからはじめよう」(1983年)の 15秒 TVスポットの撮影 シークエンスも垣間見ることが出来る。
シングル曲の TV CMをここに発案したのも佐野元春自身で、彼 はここでも演出・構成を自ら行った。
この『 Film No Damage』が、 MTV以前に作られていたという意義はとても大きい。しかもそれはレコード会社や映画関係者からではなく、ミュージシャンである佐野元春本人からのアイディアであったことは、注目に値する事実だ。
その後、佐野元春はアメリカへと渡り、ミュージック・クリップ「 Tonight」を制作し、日本へと持ち帰ることになる。
「ラジオ・スターの悲劇」ではないが、佐野元春は既に 1980年代初頭において、ポップ・ミュージックと映像におけるあらゆる可能性について、この時期に既に見抜いていたのである。
作品データ
タイトル:佐野元春「Film No Damage」
製作年:2013年
製作国:日本
上映時間:71分
公開日:2013年 9月 7日(土)
製作・配給:ソニー“Livespire”(ソニー PCL株式会社)
企画:株式会社ソニー・ミュージックダイレクト
制作協力:株式会社エムズファクトリー音楽出版
クレジット:(C) 1983 Epic Records Japan Inc.
ゆかりの地図
中野サンプラザ |
東京都中野区中野4−1−1 |