いきものを友に、自然を師に学び、朝鮮の山々の緑化に半生を捧げた日本人・浅川巧の生涯を描いた映画『道~白磁の人~』が、6月9日からの全国公開に加え、6月30日から東北地方でも公開される。
本映画では、林野庁等が推進する森林づくり国民運動『フォレスト・サポーターズ』とのコラボレーションで、東日本大震災の大津波で失われた1,000haを越える海岸林と、東北地方の豊かな森の恵みを活かす知恵や技等の再生・復興を呼びかける、『映画のチカラで、森を元気に。』キャンペーンを実施している。
こうした中、「奇跡の一本松」で知られる高田松原の再生に向けて、本映画のストーリーと同様に試験研究機関の尽力により、高田松原の松ぼっくりの種から育てた苗木は林木育種センター 東北育種場で順調に成長しており、今では10~15㎝程に育っている。
その苗畑を主演・吉沢悠さん(浅川巧役)と江宮 隆之先生(小説「白磁の人」原作者)が見学。その後行われたフォーラム盛岡での舞台挨拶では、育種場で吉沢さんが預かった苗木が「高田松原を守る会」へ引き渡された。
【舞台挨拶概要】
実施日:6月27日(水)
場所:フォーラム盛岡
登壇者:吉沢悠、江宮隆之(原作者)、鈴木喜久(高田松原を守る会 会長)、伊藤文彦(林野庁東北森林管理局盛岡森林管理署長)
主催:めんこいテレビ
協賛:ぴょんぴょん舎
■主演・吉沢悠さんコメント
今回のこの映画はスタッフさんの8割くらいが韓国の方でした。僕は韓国の俳優さんやスタッフの方と仕事をするのが初めてだったので、不安な部分もあったのですが、一番最初に韓国に行ったときに、向こうのスタッフの方が暖かく迎えてくれたので、不安はなくなりました。浅川巧さんという人を、日本でも韓国でも多くの人に知ってもらいたいというみんなの想いが詰まった作品になっています。共演者のぺ・スビンさんとは”一生の友達”と言える仲になりました。この映画が伝えたかったことを、僕らが実現できていると思います。
この映画は日韓の歴史や、朝鮮の民芸、文化について触れている映画ではありますが、構えないで観て下さい。日韓の歴史、というと「ちょっと難しいかな」とかセンシティブに感じる部分はあるかと思いますが、僕らがこの映画で伝えたかったのは、人種や言葉の壁を越えた、日本人と韓国人との友情です。どうぞ肩の力を抜いて観ていただければと思います。
■原作者・江宮隆之さんコメント
浅川巧という人の本を書くにあたって、二つ理由がありました。浅川巧の魅力は、肩書きやお金、権力といった部分で勝負をしているのではなくて、人間の持っている人としての力だけで生き抜いた人だということ。わずか40年しか生きなかった人生の中で100年後の我々に色々なものを残してくれた。それを伝えたいということがまず一つ。もう一つは、その浅川巧という人を、できれば若い人に知ってもらいたいという想いがありました。
今から20年前、日本と韓国の間には今では考えられないくらいの精神的な溝がありましたが、これからの日本と韓国を生きる若い人たちはもっと理解しあわなくてはいけない。浅川巧という人は、お互いを理解するための架け橋になるのではないかと思いました。国籍が違おうと、肌の色が違おうと分かり合えるということ。今韓国にある森林の37%が100年前に浅川巧が植えたものです。100年前の浅川巧が、100年後の韓国に残したプレゼントだと思います。そういったこともふまえて、この映画を観ていただければと思います。
■協賛・ぴょんぴょん舎 邉社長コメント
本日は試写会にお越し頂き、ありがとうございました。この映画の原作である「白磁の人」を読んだときに、私は大変感動しました。あの1910年代に、日韓併合の大変なさなかに、浅川巧という人が、私の祖国・韓国でその地域の文化を愛し、そして人間の尊厳というものを大事にしながら、自分の意志を貫いて生きていく姿をみて、大変尊敬し、ああいう風に生きていきたいと思いました。そして「いつか映画にならないものだろうか」と思っていたので、今日このように試写会ができたことを大変嬉しく思います。皆さんにお願いがございます。映画の中に浅川巧さんとチョンリムという二人の男性が出てきます。その二人の国境を越え、民族を越えた友情をみんなに伝えてほしい。そこに今日の試写会の意味があると思います。
■林野庁東北森林管理局盛岡森林管理署長・伊藤文彦さんコメント
浅川巧さんは朝鮮に渡る前、今の林野庁の前身でもある当時の秋田県の大館の営林署でもお仕事をされ、日本国内でも木を植えていた方でもあります。その後韓国に渡り、森林の再生に尽力され、我々林業者にとって、大変誇れる人物です。昨年の東北大震災で、青森から千葉にかけて140kmの海岸防災林が失われたことを受けて、海岸林と復興を呼びかける「緑の再生プロジェクト」を実施おり、ちょうど同じタイミングでこの映画が公開されるということで、『映画のチカラで、森を元気に。』というキャンペーンを実施することとなりました。映画をきっかけにより多くの方に森づくりに興味を持っていただき、ご支援いただければ思っています。
■高田松原を守る会 会長・鈴木喜久さんコメント
7月1日に、私達が作っている苗畑に、今日いただいた松苗を植える予定です。この松苗は、被災する前に高田松原の松ぼっくりの種を滝沢村の育種場に送り、育ててもらっていた松苗なんです。600本育ちまして、そのうちの300本を5月12日に東北育種場から高田松原にお持ちいただき、移植しました。この松苗もその仲間と同じ苗畑に植える予定です。今日は吉沢さんがわざわざ東北育種場に行って、この松苗を預かり、届けて下さったこと、大変嬉しくおもいます。ありがとうございました。
【映画の概要(キャンペーン誕生の背景)】
■1891(明治24)年山梨県に生まれた浅川巧は、1914年から朝鮮総督府の林業試験場に勤務し、外来樹種ではなく地域性樹種による緑化を目指し、朝鮮五葉松の種子の人工発芽を成功させ、荒廃した朝鮮の山々の緑化に貢献するとともに、「木を植える 」ことを通して、人と人の心をつなぎました。
■また、近代化により古き良き地域の文化の衰退が進む中で、名もなき職人の手仕事による膳といった家族団欒の中心にある生活用品の美しさを世に広め、民藝運動の祖・柳宗悦に多大な影響を与えました。
■2011年、東日本大震災が起こり、人と自然との共生の在り方への問いに世界が大きく揺れました。その時代に誕生したこの映画は、分け隔てなく人と付き合い、自然を師に学び、木を植え続けた浅川巧の生き方を、時代や国境を越えて私たちに伝えてくれるものになっていることから、キャンペーンが誕生しました。
【作品概要】
この作品は、日本で生まれ、朝鮮を誰よりも愛し朝鮮の土となった浅川巧の半生を描いた作品です。 浅川巧は、23 歳で朝鮮半島に渡り、林業技師として山林の緑化復元に貢献し、朝鮮民芸品(白磁)の美しさを広く伝え、 民芸運動の祖でもある柳宗悦に多大な影響を与えた人物です。生誕 120 周年を迎えた現在でもその偉業は多くの人 に語り継がれています。映画化されるにあたり、外国映画として初めて、KOFIC(韓国映画振興委員会)の支援を受け、 高橋伴明監督のもと、約 9 割が韓国人スタッフと、これまでにない規模の日韓合作の映画が誕生しました!!
【ストーリー】
1914 年、浅川巧(吉沢悠)は、兄の伯教(石垣佑磨)と母(手塚理美)のいる朝鮮半島に渡る。彼は傷んだ 山々を緑化する林業技師。生き物を友とし、自然を師として学んだ巧は、植民地時代の差別意識の影響も受ける事なく 同じ林業試験場で働く李青林(ぺ・スビン)と出会い生涯の友となる。ある日、兄の部屋に置かれていた朝鮮民芸品の中 にあった壷(白磁)の美しさに魅せられる。巧は、朝鮮の民芸や暮らし、その土地に生きる人々を生涯愛し続けた。
【キャスト】
吉沢悠、ぺ・スビン、酒井若菜、石垣佑磨、塩谷瞬、黒川智花、近野成美、チョン・ダヌ、チョン・スジ、 市川亀治郎、堀部圭亮、田中要次、大杉漣、手塚理美、他。
監督:高橋伴明
原作:江宮隆之「白磁の人」河出文庫刊
配給:ティ・ジョイ
製作:小説「白磁の人」映画製作委員会/「道~白磁の人~」フィルムパートナーズ
(C)2012 「道~白磁の人~」フィルムパートナーズ
新宿バルト9、有楽町スバル座ほか、絶賛上映中!
6月30日、八戸、盛岡、仙台、山形、福島ほかにてロードショー