東京都世田谷区、静岡県御殿場市・函南町・伊豆市・長泉町・沼津市、神奈川県箱根町
作品概要
©1954 東宝
破格の製作費と年月をかけて作られた日本映画史上空前の超大作。世界に誇る日本映画の最高傑作。
ストーリー
戦国時代、野武士達の襲撃に恐れおののく村があった。村人たちはその対策に、侍を雇うことにした。侍探しは難航するが、才徳に優れた勘兵衛(志村喬)を始めとする個性豊かな七人の侍が集まった。数で勝る野武士たちに侍は村人たちと共に挑んでゆく…。
地域・建築ばなし・プロダクションノート
黒澤明、橋本忍、小国英雄の3人は、熱海の老舗旅館「水口園」で缶詰になって45日間かけ脚本が書かれています。(「水口園」は現在はありません。)
七人の侍が守る村の設定は、米と麦の「二毛作をやっている村」です。これにあてはまる地方は、北は福島、南は白川郷あたりまでで、メインスタッフは何週間もかけロケハンをしています。しかし、見つけるることができませんでした。
七人の侍が守る村は、野武士からの防衛のために構想された村で 後ろに山、東に小川、西に広い道、南に田圃がある設定でした。そのため、なかなか見つからず、別々の場所で撮影して作ることになりました。
したがって、別々の場所(大きく分けると5つのエリア)でロケーション撮影してひとつの村のように見せています。
ロケーション撮影された5つのエリアは、「世田谷区大蔵」「御殿場市東田中」「御殿場市二岡」「函南町丹那」「伊豆市堀切」です。
ロケハンでは、美術監督助手(チーフ)村木与四郎が秩父の古い農家をスケッチ、美術監督助手(セカンド)の竹中和雄が白川郷の合掌造りをスケッチしています。それを参照し、鬱屈した農民の心情を反映させた厚く大きい23戸の藁屋根のオープンセットが作られています。
「村の全景」を見下ろすシーンは、静岡県函南町(かんなみちょう)「丹那トンネル」の上から俯瞰で撮影されました。
「村の全景」は、函南町「丹那」下丹那地区にロケオープンセットを建て込んで撮影されています。
「村の検分」「野武士の騎馬襲来」「北の斜面」のシーンは、静岡県函南町(かんなみちょう)「丹那」の下丹那地区でロケーション撮影されました
村の中心部の「豪農の家」「野武士の山塞(さんさい)」「奇襲をかける渓谷」「勘兵衛の剃髪」のシーンは、世田谷区成城「東宝撮影所(砧撮影所)内オープンセット」で撮影されました。
「侍探しの町」(木賃宿、八角堂、茶屋のある町)のシーンは、「東宝撮影所(砧撮影所)」の南、近く(世田谷区大蔵5丁目)にあった「農場オープン」のオープンセットで撮影されました。
村の中心部の「村の広場・辻」「墓地」「合戦の場」「水神の森」のシーンは、東京都世田谷区「大蔵」でロケーション撮影されました。(世田谷区大蔵3ー3−15(旧大蔵住宅15号棟)を中心としたエリア)
村の東の「野武士の騎馬突入路」のシーンは、静岡県御殿場市「二岡」でロケーション撮影されました。
村の南の「水車小屋」「田圃」「菊千代の落馬」のシーンは、静岡県伊豆市「堀切」でロケーション撮影されました。
村の西の「防柵」シーンは、静岡県御殿場市「東田中」でロケーション撮影されました。
「侍の休憩」のシーンは、静岡県長泉町「下土狩」でロケーション撮影されました。
菊千代が鮎を捕まえて食べる「滝」のシーンは、静岡県長泉町「下土狩」鮎壺の滝でロケーション撮影されました。
「街道」のシーンは、静岡県函南町(かんなみちょう)「平井」でロケーション撮影されました。
「北の裏山」のシーンは、神奈川県箱根町「仙石原」でロケーション撮影されました。
「山塞へゆく道中」のシーンは、静岡県沼津市「口野」でロケーション撮影されました。
「木賃宿」「水車小屋」のセットで作る際には、木目が浮き出し黒光りする黒澤映画十八番の「焼き板」づくりが開発されています。
後に、黒澤明監督は「全景ショットを撮った場所(静岡県函南町「丹那」)がベストだった。本当はあれ1か所でよかった。」と語っています。しかし、当時、ロケ地の山側には畑がありました。畑を買ってつぶせばよかった。しかし、撮影当時は戦後の飢えの記憶が生々しく、スタッフの誰一人として、映画のために畑をつぶす、という考えは浮かびませんでした。
※七人の侍のロケ地について(参考文献)
「七人の侍 ロケ地の謎を探る」(著:高田雅彦)
「村木与四郎の映画美術 聞き書き黒澤映画のデザイン」(著:村木与四郎・丹野達弥)
第27回東京国際映画祭で特別上映されました。(「七人の監督」(大友啓史、中島哲也、羽住英一郎、三池崇史、山崎貴、吉田大八、李相日)選出を記念して特別上映。)
ロケ地:都市・地域・施設(建築物・土木構造物)
東京都
世田谷区:大蔵
静岡県
御殿場市:東田中、二の岡
函南町:丹那(下丹那地区)
伊豆市:堀切
長泉町:下土狩
沼津市:口野
神奈川県
箱根町:仙石原(姥子地区)
【スタジオ】
東京都
世田谷区:東宝撮影所(砧撮影所)
映画にちなんだもの
日本の武芸譚「本朝武芸小伝」、百姓、武士、野武士、水車小屋、坊主、薪割り
映級グルメ
映画に出てくるグルメ:白米、稗(ひえ)
キャスト
三船敏郎、志村喬、宮口精二、藤原釜足、加東大介、木村功、千秋実、小杉義男、左卜全、稲葉義男、土屋嘉男、東野英治郎、多々良純、津島恵子、仲代達矢
スタッフ
- 監督:黒澤明
- 脚本:黒澤明、橋本忍、小国英雄
- 製作:本木荘二郎
- 音楽:早坂文雄
- 撮影:中井朝一
- 照明:森茂
- 美術:松山崇
- 美術助手:村木与四郎
- 美術小道具:浜村幸一
- 衣裳:山口美江子
- 録音:矢野口文雄
- 記録:野上照代
- 編集:岩下広一
作品データ
- クレジット:©1954 TOHO CO.,LTD
- 製作年:1954年
- 公開日:1954年4月26日、2016年9月13日(4Kデジタルリマスター版)
- 製作国:日本
- 配給:東宝
- 上映時間:207分
- 映倫区分:G
- 受賞歴等:第15回ヴェネツィア国際映画祭銀獅子賞受賞(1954年)、キネマ旬報「オールタイムベスト100 日本映画編」第1位(1999年)、英エンパイア誌「史上最高の外国語映画100本」第1位(2010年)、英BBC「史上最高の外国語映画」第1位(2018年)
ゆかりの地図
大蔵 |
東京都世田谷区大蔵3丁目3−15 |