愛しきソナ

【作品概要】
大阪で生まれ育った在日二世の映像作家ヤン・ヨンヒが、帰国事業によって70年代に北朝鮮に移り住んだヤン監督の3人の兄とその子どもたち、特に姪のソナにフォーカスを合わせ、近くて遠い二つの国をつなぐ強い絆と深い愛をめぐる、可笑しくも切ない家族の物語を描き切った。心に染み入るような繊細な優しさが伝わる感動作。

ヤン監督は17歳の修学旅行で訪朝して以来、幾度となくピョンヤンを訪れている。生まれた頃から交流を続けてきたソナの屈託のない笑顔と成長を温かいまなざしで見つめながら、70年代に“地上の楽園”とされた祖国に父によって送り出された兄たちがたどった運命とその胸に秘めた想い、そして自分の息子を送り出しながらその後の思いもよらない状況に悔恨の念をにじませる父の心情と、その病床の姿を厳しい視線で映し出す。
ふたつの国に暮らす自分の家族の生きざまを描きながら、そこには思想や価値観の違いを超えた、誰もが心の内に持っている家族への切ない想いが浮かび上がってくる。

本作では北朝鮮の一般庶民のホームパーティーや墓参り、結婚式の様子や、ボーリング場で遊ぶ姿、子供の登校風景など、北朝鮮で暮らす人々の日常のひとコマが数多く切り取られている。そして電気や水道、ガスの使用が制限されるなど、日本とは生活水準が大きく違うが、そこに暮らす人々の心の中はわれわれとあまり変わりはないという事が画面から伝わってくる。

【ストーリー】
東京で暮らす私(ヤン・ヨンヒ監督)には、ピョンヤンで暮らす3人の兄と、天真爛漫で屈託のない笑顔の姪ソナがいる。
1972年から3人の兄が帰国事業で北朝鮮に渡り、ピョンヤンで暮らすことになった。当時、北朝鮮は“地上の楽園”と呼ばれ、民族差別のため日本で進学や就職の道が閉ざされていた兄たちにとって、それは最善の選択と思われた。兄たちは当時18歳、16歳、14歳。私はまだ6歳で両親とともに日本に残った。

私は、ソナと甥っ子たちを、彼女らの幼い頃からピョンヤンを訪れる度にビデオカメラに収めた。ボーリング場で遊ぶソナと甥っ子たち。兄たちの家族と一緒に囲む食卓。日本に残った祖父と祖母へのビデオレター用に挨拶する子供たちの笑顔が愛くるしく、バス・ターミナルでの別れが寂しい。
ソナはクラスの友達や好きな男の子の事も話してくれた。
またピョンヤンに住む彼らの墓参りや結婚披露宴、誕生パーティーの様子もビデオカメラに収めた。
ソナの登校に付いて行った私は、兄(ソナの父)と手をつないで歩くソナに、幼い頃の自分を重ねた。校門でつぶらな瞳の子どもたちに囲まれたが、私は中に入る事は出来なかった。自分はあくまでも訪問者で、ソナはこの国で生きているという事を痛感したからだ。

夜の団欒の時、ソナの母がギターを片手に弾き語る母親への想いを込めた歌に、父は涙した。翌日その父が一番上の兄コノと散歩をする。北朝鮮に送り出した者と送り出された者。二人の胸には様々な想いがあるはずだが、兄は父の体を思いやる言葉をかけ、父は無口になるだけだった。
その後、私は前作「ディア・ピョンヤン」が原因で、北朝鮮政府から入国禁止を言い渡されてしまう…。

【スタッフ・キャスト】
監督・脚本・撮影:ヤン・ヨンヒ
エグゼクティブプロデューサー:チェ・ヒョンムク
音楽:Marco
編集:ジャン・ジン

【作品データ】
製作年:2009年
製作国:韓国・日本
配給:スターサンズ
尺:82分
映倫区分:G
公式サイト: http://www.sona-movie.com/

【地域ばなし・ロケ地】
北朝鮮:ピョンヤン

日本:大阪市生野区

【映級グルメ・商品】
トッポギ
アイスクリーム

赤いランドセル
ミッキーマウスの靴下

【トピックス】
『ディア・ピョンヤン』『愛しきソナ』の2本立て特集上映。
上映館:テアトル新宿
日時:2012年7月21日〜7月27日、19:00〜

【レビュー】
・・(略)・・。その二番目の兄の娘、ソナに梁(ヤン監督)は自らの姿を重ね合わせる。愛くるしい彼女は、五歳で実母に病死されたからである。生きているけれども容易には兄たちと会えなくなった梁の喪失感と、母を亡くしたソナの喪失感。それを梁は、むしろ、淡々と描く。それによって、より深く、より強く、見る者に喪失感が伝わってくる。・・(略)・・(佐高信)

【ゆかりの地図】

ピョンヤン

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