大阪府大阪市・堺市、兵庫県神戸市、ニューヨーク・ロサンゼルス・ フォンタナ・ナパヴァレー(アメリカ)
作品概要
TM & Copyright (C) 1989 by Paramount Pictures Corporation. All Rights Reserved. TM,(R) & Copyright (C) 2013 by Paramount Pictures.All Rights Reserved.
高倉 健vs.松田優作——二度と叶わないただ一つの競演映画。 日米オールスターキャストで贈るアクション・サスペンス巨編
ストーリー
ニューヨークで起きた惨殺事件の犯人・佐藤を逮捕したNY市警のニックとチャーリー。彼らは日本へ護送する途中で佐藤に逃げられてしまう。大阪府警の協力を得て捜査のため足を踏み入れた大阪で、ニックたちはミステリアスな暗黒街にうごめくヤクザの標的になってしまう……。
地域・建築ばなし・プロダクションノート
当初は東京でロケ撮影する計画で東京でロケハンをしています。
東京でのロケ撮影を2か月半検討されました。リドリー・スコット監督は混沌としたイメージを東京で探しましたが、見つかりませんでした。「日本的な汚さを探したが東京にはない。合成建材の建物ばかりで途方に暮れたよ。」とコメントしています。
プロダクション・デザイナーのノリス・スペンサーとリドリー・スコット監督は、東京中を車で走り回って驚くような景色を片っ端から探しています。そして古いものが少ないことに気づいたといいます。「ニューヨークには古いものがあるから映画のロケ地としてすばらしいんだ。」とコメントしています。
東京には古い建物が見当たらず、また撮影許可も下りないため、大阪ロケに切り替えています。
大阪府知事が東京への対抗心があり、ロケに協力的であったことも大阪ロケになるきっかけになっています。
なお、当時、大阪には古い建物が残っていたと、リドリー・スコット監督はコメントしています。
大阪の全体を映し出すシーンに「大阪城」の外観がクローズアップで登場します。
日本ロケは、10週間の予定でしたが、日本ではロケ協力が得られないため、5週間で切り上げてアメリカに戻っています。日本ロケで撮影できなかったシーンは、アメリカ国内で撮影されました。
ハリウッド映画の製作サイドは、日本ロケについて、下記のように話しています。
「撮影の初日に大阪府庁に入った。自由に使っていいと言われててね。どれだけの時間でどう撮るか、計画を練っていったよ。だが、その日、現場に着くと電話がかかってきた。公的施設を撮影に貸すことを批判する記事が出たらしい。数時間しか貸せなくなったと通告された。その日撮影できるのは2時間、残りは別の日にと。そうやって撮影が始まったんだ。」
「日本人はアメリカ流の映画製作を理解しなかった。いいロケ地があっても、交渉を重ねないと撮影許可が下りないの。それも使えるのは朝10時から午後5時までよ。終わらないことが多くて、明日も撮らせてと頼んだけど、許可時間外だから無理だと言われた。」
「もう30分、警察に交渉してくれと監督から何度も頼まれた。でも、いつも断られた。」
「いろいろと話し続けて時間を稼いだ。でも、15分ほどで気づかれて結局は追い出されたわ。大変だった。」
「日本は何をするにも許可が必要な国だ。大阪の街を撮るときは役所に申請書を出して、キャメラの動きや設置場所を詳細に伝える。だが、それを書くと、次は照明の位置も聞かれるんだ。現場でしか決まらないのに。仕方ないから光量などを想定して書くが、実際に行くと違っていて、シーンが変わることもあった。」
「俳優が映らなくても、キャメラは動かすなとか、現場での変更は認められず、とにかく苦労した。」
「80年代後半、日本での映画撮影は困難だった。日本の映画産業はハリウッドと違い、主要産業ではなかったからだ。だから撮影に協力する体制も、アメリカとは段違いだった。特に、大阪や東京などは協力的でなかった。それで日本映画の舞台は郊外が多いのだと気づいた。」
「大都市はロケ中の混乱に対処できないことが、すぐにわかった。」
「アメリカの場合は、どの街でロケをしても、集まる見物人は200人〜300人くらいだ。だが、大阪では1万人は集まる。それなのに警察は出動せず、私的な撮影については警備員を雇えと言われる。」
また、大阪ロケでの個別のエピソードは下記のような苦労話ばかりです。
「阪急梅田駅ターミナルビル(1階コンコース)」で、 チャーリーがパスポートが入ったコートをバイクの男に奪われ追いかけるシーンが撮影されました。この美しい巨大なコンコースでロケ撮影の許可が下りたのは夜間の2〜3時間だけでした。
「大阪市中央卸売市場」でのロケ撮影は2日間の予定が1日(24時間)だけと言われ、25万ドルの保証金を請求されています。
「パチンコ屋」の屋内シーンは、ロケ撮影の終了時間が12分遅れたと、ロケ地サイドと言い合いになっています。
「新日本製鐵堺製鐵所」で製鉄所シーンの一部がロケ撮影されました。「新日本製鐵堺製鐵所」のロケ撮影は途中で中止するようロケ地サイドに言われ、ロケ撮影が中止されています。
「あべの筋」でニックとチャーリーの屋台シーンがロケ撮影されました。このシーンはゲリラ撮影です。
このように、大阪ロケはトラブルが多発しています。その結果、ハリウッドで「日本は規制が多く、映画ロケがまともにできない国である」という評判が広まりました。その後、外国映画のロケ撮影、特にハリウッド大作の日本ロケは長い間、全くといいほど実施されませんでした。
※ 2000年以降、日本各地にフィルムコミッション(FC)が設立され、日本におけるロケ撮影は1988年当時とは違い、全国各地のロケ支援は充実してきています。
クライマックスの「畑でのアクションシーン」は、北海道で撮る予定でしたが、アメリカ「ナパ・ヴァレー」で撮ることに変更されています。
日本で撮影できたのは、結局、全体の3分の2ほどにとどまっています。撮影できた日本ロケ撮影は下記の通りです。
「道頓堀」シーンでは、あらゆる色温度を含むネオンが映し出されています。リドリースコット監督は「この大量のネオン広告を見て欲しい。それでどれも違う色を発しているんだ。ヤンはどう撮ればいいのかと行き詰まりそうになった。そしてネオンを照明として利用した。難しい撮影だったよ。」とコメントしています。
リドリースコット監督は「道頓堀はいい所だった。いい食堂が沢山あり小さなレストランやバーが夜を盛り上げていた。」とコメントしています。
「道頓堀」シーンには、1987年から2008年まであった「KPOキリンプラザ大阪」も映っています。設計は高松伸で、日本建築学会賞を受賞したポストモダン建築です。バブル期らしい個性的な建築です。
ニック(マイケル・ダグラスと松本(高倉健)が張り込みを行い、うどんを食べながら話しをするシーンは「大阪市中央卸売市場」でロケ撮影されました。
松本(高倉健)がそばを食べている「大阪府警察署」のシーンは「阿倍野警察署旧庁舎」でロケ撮影されました。
パトカーが出動するシーンは「大阪府庁舎」でロケ撮影されました。
松本(高倉健)の自宅シーン(外観のみ)は「南港ポートタウン」の住宅団地でがロケ撮影されました。室内シーンは、アメリカでセット撮影されています。
ニック(マイケル・ダグラス)とチャーリー(アンディ・ガルシア)がバイクの暴走族に囲まれるシーンは「十三サカエマチ商店街」でロケ撮影されました。
暴走族に囲まれるシーンで、暴走族が旗を立てていますが、これは黒澤明監督作品のシーンから取り入れたものです。
「剣道」シーンは大阪でロケ撮影されました。
「製鉄所」シーンは、大阪市「中山製鋼所転炉工場」堺市「新日本製鐵堺製鐵所」とロサンゼルス郊外の製鉄所でロケ撮影されました。
なお、日本でのロケ撮影を取りやめ、アメリカに戻って撮影されたシーンは下記の通りです。
ちなみに、大阪とロサンゼルス、別々の場所でロケ撮影した映像は、編集のテクニックで違和感なく繋がれています。
ニック(マイケル・ダグラス)が飛行機から抜け出す空港シーンは「ロサンゼルス国際空港(LAX)」でロケ撮影されました。
チャーリー(アンディ・ガルシア)が殺される地下駐車場シーンは、ロサンゼルスの高速道路下でロケ撮影されました。
ヤクザの親分・菅井(若山富三郎)の自宅シーンは、ロサンゼルス「エニス邸」でロケ撮影されました。「エニス邸」はフランク・ロイド・ライト設計の有名な建築です。フランク・ロイド・ライトは、日本で「旧帝国ホテル」の設計をするなど、日本と深いつながりがあることから「エニス邸」でロケ撮影されています。
「クラブみやこ」の室内シーンは全て、ロサンゼルス「パラマウント・スタジオ」のセットで撮影されました。
ヤクザのアジトのシーンは、ロサンゼルス「ブラッドベリー・ビル」でロケ撮影しています。換気扇が回っていて、それで光の動きを演出しています。
クライマックスの「畑のアクションシーン」は、アメリカ・カリフォルニア洲「ナパ・ヴァレー(ブドウ畑)」に建物と鳥居などのオープンセットを建て込んで撮影されました、「ナパ・ヴァレー」のロケ撮影は10日間、うち9日間が雨でした。
本作の仮編集版は2時間40分でした。その後、2時間以内に編集した再編集版は1時間50分でした。「なぜ、カットしたのか」と製作(プロデューサー)が指摘し、カットしたシーンを元にもどしています。
ロケ地:都市・地域・施設(建築物・土木構造物)
大阪府
大阪市:道頓堀、阿倍野警察署旧庁舎(解体)、大阪府庁舎(外観)、阪急梅田駅ターミナルビル(1階コンコース)、心斎橋の歩道橋(解体)、大阪市中央卸売市場、十三サカエマチ商店街、京橋商店街、あべの筋、南港ポートタウン、中山製鋼所転炉工場(解体)
堺市:新日本製鐵堺製鐵所
兵庫県
神戸市:元町1丁目
アメリカ
ニューヨーク州
ニューヨークシティー:ブルックリン、マンハッタン
カリフォルニア州
ナパ・ヴァレー(ブドウ畑)
フォンタナ:「カリフォルニア・スティール・インダストリー・インク」の製鉄所
ロサンゼルス:ブラッドベリー・ビル(Bradbury Building) ロサンゼルス国際空港(LAX)
アメリカ
ニューヨーク州
ニューヨーク市:ブルックリン、マンハッタン
カリフォルニア州
ナパ・ヴァレー(ブドウ畑)
ロサンゼルス:エニス邸、ブラッドベリー・ビル(Bradbury Building) ロサンゼルス国際空港(LAX)
【スタジオ】
アメリカ
カリフォルニア州
ロサンゼルス:パラマウントスタジオ
映画にちなんだもの
ヤクザ、指詰め、仁義、日本刀、剣道、官僚主義、チンピラ、暴走族、ニセ札、ゴルフ練習場、パチンコ、ニューヨーク警察、汚職、遺品、食肉加工工場、離婚、闘牛士、フィルム・ノワール、日米関係、異文化の交錯、倫理観、自尊心
映級グルメ
映画に出てくるグルメ:そば、うどん、スコッチウイスキー、傘の飾りのカクテル
支援
ノースウェスト航空、電通、日産自動車、スズキ、松下電器産業、ペプシコ・ジャパン、他
キャスト
マイケル・ダグラス、アンディ・ガルシア、高倉健、松田優作、ケイト・キャプショー、若山富三郎、神山繁、ガッツ石松、内田裕也、小野みゆき、國村隼
スタッフ
- 監督:リドリー・スコット
- 脚本:クレイグ・ボロティン、ウォーレン・ルイス
- 製作総指揮:クレイグ・ボロティン、ジュリー・カーカム
- 製作:スタンリー・R・ジャッフェ、シェリー・ランシング
- 音楽:ハンス・ジマー
- 撮影:ヤン・デ・ボン
- プロダクション・デザイナー:ノリス・スペンサー
- 衣裳:エレン・マイロニック
- 編集:トム・ロルフ
作品データ
- クレジット:TM & Copyright (C) 1989 by Paramount Pictures Corporation. All Rights Reserved. TM,(R) & Copyright (C) 2013 by Paramount Pictures.All Rights Reserved.
- 製作年:1989年
- 公開日:1989年10月7日
- 製作国:アメリカ
- 配給:UIP
- 上映時間:125分
- 映倫区分:G
- DVD・ブルーレイ: 「ブラック・レイン デジタル・リマスター版 ジャパン・スペシャル・コレクターズ・エディション」Blu-ray: 2,075 円/DVD: 1,572 円 (税込み) 発売元: NBCユニバーサル・エンターテイメント
- 原題:Black Rain
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