東京・日本外国特派員協会
写真:(C)地ムービー
今年(2019年)の東京国際映画祭オープニング作品は『男はつらいよ お帰り 寅さん』です。
第一作目の公開から今年で50年を迎え、シリーズで50作目となる『男はつらいよ』奇跡の最新作となります。
2019年10月3日、東京国際映画祭の記者会見が 日本外国特派員協会で開催されました。
記者会見には、山田洋次監督が登壇。「映画祭」や「寅さん」に関する想いを語りました。
【山田洋次監督 挨拶】
半世紀以上にわたって、何十本の映画を作ってきました、だけど今度の映画を作るときに、初めてこんな映画をつくるんだと驚きました。 いったいどんな映画になるのだろうという、不安と期待が撮影中、僕のなかにずっとあったのです。完成した後に、自分の映画を繰り返してみながら思ったことは、この映画を作るために50年の歳月が必要だったのだなということです。だから、長生きしたからこういう映画ができたのだなというのが今の感想です。
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【山田監督へのマスコミからの質疑応答】
Q 渥美清さんが今回の50作目『男はつらいよ お帰り 寅さん』を見たら、どんなことおっしゃるとおもいますか
A 渥美清さんが、見たら、「おれ、びっくりしたよー。」というんじゃないかな。
A さくらがプロポーズされたのは倍賞千恵子さんが25歳の時で、現在は75歳。皆んな歳をとっている。ただ、寅さんだけが歳をとっていない。寅さんは歳をとらない存在で、マリリンモンローとかチャップリンのような存在ではないでしょうか。
Q 「フーテン」の翻訳が「Free Sprited Fool」となっていましたが、一つの所に留まらないという意味でのフーテンでなく、精神的自由という訳になっていましたが、それをどう考えますか。
A 精神の自由な男と考えたいですね。表現の自由もあります。
Q マドンナを選ぶ基準は、マドンナとして山口百恵が出演していないのは何故ですか(シンガポール記者)
A 寅さんが恋をするのは、どんな女優だろうと考えるのが楽しみでした。どんな人とでも寅さんは恋をできるです。
A 山口百恵さんをマドンナにと考えたことはありましたが、その時すでに、映画出演をやめていたので、実現できませんでした。
Q 88歳で映画を作ること。これから、どんな映画を作りたいか。(ロシアの記者より)
A 困ったな…自分の歳のことを考えると怖くてね。映画どころじゃねぇよっと思ったりするのです。 でもまぁアメリカにはクリント・イーストウッドという監督がいるので頑張っているから、僕も一緒に頑張ろうかと思うのですけど。ポルトガルのマノエル・デ・オリベイラ監督、新藤兼人監督は100歳まで映画を撮られたから、まだまだ希望は持っていいんじゃないかな。
写真:(C)地ムービー
Q シリーズのもの難しさ、これまでの作品で脚本が難しかった作品は。
A 観客は、またあの寅さんを観たいと思って来るので、その期待を裏切っていけないですし、そうでありながら、裏切らなきゃいけない。それがシリーズ物の難しさです。レストランのシェフと似てると思います。
A 脚本で苦労したのは48作目です。渥美清さんの体調が悪くて、それに合わせた脚本をつくりました。
Q 東京国際映画祭について。
A 色んな国に様々な映画祭があって、東京国際映画祭は日本を代表する映画祭ですよね。その東京映画祭の特徴は何か、魅力は何か、テーマを持つということがとても大事なことじゃないかと思う。そういう努力をし続けていって、この映画祭が世界のユニークな映画祭になるように心から映画人の一人として思う。
Q 満男に寅さんが「生まれてきてよかったと思うことがそのうちあるさ。」というセリフがありますが、山田洋次監督が「生きててよかった」と思えることは。
A 正直言って、楽しいことばかりでなくて。世界の状況は喜べない状況で、国内・外国・国際・・・、よかったと思える時代が来ることが一番大切だと思っています。
Q 靴の営業をしていた満男が作家になったのは。
A ようやく小説家としてやっていけるようになった。寅さんから教わったことが課題としてあって・・・。作家でなくても良かった。他でも良いのですが、小説家になるという(ストーリー)」は、間違っていなかったんじゃないか、と思っています。
Q 寅さんは、いつも駅で別れるのですが、今回の作品の別れのシーンが空港なのは。(フランスの記者より)
A 寅さんは、旅する人、仕事のうえで、新幹線は嫌いで、在来線に乗っています。車の運転もできません。お酒を飲みながら普通列車に乗って、周りの人たちとあれこれ話しながら過ごすのが好きです。だから、早くついてしまうのがいやで、早くついてしまうのに、(特急などは)なぜ高い料金を払わなければいけないのだと考えている。満男や泉ちゃんは、寅さんと別の人生を歩んでいるので、空港が舞台となりました。
なお、今回の記者会見では、「おかえり寅さん」のシリーズ化についてのリクエストもあり、早くも第51作への期待も感じられました。
第32回東京国際映画祭 日本外国特派員協会 記者会見
写真:(C)地ムービー
日時:10月3日(木)17:00〜
会場:公益社団法人 日本外国特派員協会(FCCJ)
登壇者:
山田洋次監督(オープニング作品『男はつらいよ お帰り 寅さん』)
久松猛朗(東京国際映画祭 フェスティバルディレクター)
安藤紘平(「JAPAN NOW」部門プログラミングアドバイザー)
作品データ
(C)2019 松竹株式会社
小説家になった満男に、伯父・寅次郎への想いが蘇る—— 生誕50周年を迎える大人気シリーズ『男はつらいよ』の最新作は、新撮された登場人物たちの今“と、4Kデジタル修復されたシリーズ映像が紡ぎ合う奇跡の映画。 ずっと待ち望んでいた人も、初めて出会う人も、【笑いと涙】に包まれる最高の感動作! 。
出演:
渥美清 / 倍賞千恵子 吉岡秀隆 後藤久美子 前田吟 池脇千鶴 夏木マリ 浅丘ルリ子 美保純 佐藤蛾次郎 桜田ひより 北山雅康 カンニング竹山 濱田マリ 出川哲朗 松野太紀 林家たま平 立川志らく 小林稔侍 笹野高史 橋爪功
クレジット:(C)2019 松竹株式会社
原作・監督:山田洋次
脚本:山田洋次 朝原雄三
音楽:山本直純 山本純ノ介
主題歌:「男はつらいよ」渥美清 / オープニング 桑田佳祐
制作・配給:松竹株式会社
公開:2019年12月27日(金)全国公開