神奈川県鎌倉市・藤沢市・茅ヶ崎市、京都府京都市、東京都中央区・豊島区
作品概要
©1949/2015松竹株式会社
世界中の映画人からリスペクトされ続ける名匠・小津安二郎監督が、初めて娘の結婚や親の孤独を描き、以降の作品群の基軸ともなった記念碑的作品。
原節子の記念すべき、小津作品出演第一作。第23回キネマ旬報ベストテン1位。父と娘の愛の絆を映し出した名作。
ストーリー
妻を亡くして久しい大学教授の周吉(笠智衆)は、27歳になっても未だに嫁に行こうとしない娘の紀子(原節子)のことが心配でならない。周吉の妹まさ(杉村春子)が縁談を持ち込んでも、なかなか首を縦に振らない紀子。一方でまさは茶会で知り合った未亡人の秋子(三宅邦子)を周吉の再婚相手に薦めるが、常々男が後妻をもらうことに嫌悪感を抱いていた紀子の心は、そのことで揺れ始めていく。それを察知した周吉は、彼女と再婚すると紀子に告げた……。
地域ばなし・プロダクションノート
神奈川県鎌倉市「鶴岡八幡宮」で、曽宮周吉(笠智衆)と田口まさ(杉村春子)のシーン、田口まさ(杉村春子)がまぐち財布を拾うシーンがロケーション撮影されました。
冒頭のシーンは、鎌倉市「北鎌倉駅」でロケーション撮影されました。
お茶会のシーンは、脚本では「円覚寺(えんがくじ)」となっていますが、実際は「壽福寺」でその外観(仏殿(本堂)の屋根)がロケーション撮影されました。
ちなみに、脚本には「「北鎌倉の駅」晩春の昼下がりー、空も澄んで明かるく、葉桜の影もようやく濃い、下り横須賀行きの電車は、ここのホームを出はずれると、すぐ円覚寺の石段前にさしかかる。「円覚寺の参道」杉木立の間をその電車が通過する。「境内」今日は月例の茶会の日である、参会の女客がゆく。二人、三人−」となっています。(小津安二郎全集(下)より抜粋。)
紀子(原節子)と助手の服部(宇佐美淳)が、自転車で北鎌倉から茅ヶ崎に行くシーンは、湘南の海岸一体でロケーション撮影されました。鎌倉市「七里ヶ浜」から見た「稲村ヶ崎」(遠景)、 藤沢市「片瀬西浜海岸」や「鵠沼海岸」から見た「江ノ島」(遠景)が映っています。
映画が撮影された1949年は占領下であったため、湘南の海岸シーンには、英語でマイルによる速度制限の標識、英語のコカコーラの看板が映っています。英語のコカコーラの看板には「平塚ビーチ(HIRATSUKA BEACH)」の矢印案内板が付いています。
脚本家・野田高梧の昭和24(1949)年8月19日の日記に「茅ヶ崎のラッシュを見る。」とあります。そのため、自転車からおりて紀子(原節子)と服部(宇佐美淳)が話しをしているシーンは、茅ヶ崎の海岸でロケされた可能性があります。
能を鑑賞するシーンは、東京・染井にあった「染井能楽堂」でロケーション撮影されました。は、二世梅若万三郎が能「杜若」を舞う姿が、長回しの映像に収められています。「染井能楽堂」は昭和40(1965)年に解体されましたが、平成8(1996)年に神奈川県横浜市「横浜能楽堂」の「本舞台」として復原されました。
松竹大船撮影所京都のシーンでは、京都市「八坂の塔」(遠景)のショットが映画に登場します。
京都市「清水寺」の本堂・奥の院で、ロケーション撮影されました。
京都市「竜安寺」の方丈・方丈庭園でロケーション撮影されました。
龍安寺は室町時代からの名刹です。石庭と呼ばれる龍安寺の方丈庭園は、長方形の敷地に白砂を敷き詰めて石を配したもので類のない枯山水庭園です。無駄を排した名庭は特別名勝に指定されています。
東京のシーンでは「銀座和光」のショットが映画に登場します。
室内のシーンの多くは、神奈川県鎌倉市「松竹大船撮影所」のステージにセットを建て込んで撮影されました。
第36回東京国際映画祭「特集上映」でデジタル修復版が上映されました。
ロケ地
神奈川県
鎌倉市:鶴岡八幡宮、北鎌倉駅、鎌倉駅、壽福寺(外観:仏殿(本堂)の屋根)、七里ヶ浜、稲村ヶ崎(遠景)
藤沢市:片瀬西浜海岸、鵠沼海岸、江ノ島(遠景)
茅ヶ崎市:
京都府
京都市:八坂の塔、清水寺(本堂、奥の院)、竜安寺(方丈、方丈庭園)
東京都
豊島区:染井能楽堂
中央区:銀座和光
【スタジオ】
神奈川県
鎌倉市:松竹大船撮影所
映画にちなんだもの
父と娘、結婚、見合い、再婚、自転車、茶会、ミシン、能、観世流 杜若 戀之舞、地謡(じうたい)、ゲーリークーパー、がまぐち財布、熊太郎、石庭、壺、花嫁、タイピスト、ステノグラファー
映級グルメ
映画に出てくるグルメ:茶菓子、抹茶、日本酒、奈良漬け、タクワン、パン、紅茶、ジャム、ショートケーキ、番茶、リンゴ(林檎)
キャスト
笠智衆、原節子、月丘夢路、杉村春子、青木放屁、宇佐美淳、三宅邦子、三島雅夫、坪内美子、桂木洋子
スタッフ
- 監督:小津安二郎
- 脚本:野田高梧、小津安二郎
- 製作:山本武
- 原作:廣津和郎「父と娘」
- 音楽:伊藤宣二
- 撮影:厚田雄春
- 照明:磯野春雄
- 美術:浜田辰雄
- 装置:山本金太郎
- 装飾:小牧基
- 録音:佐々木秀孝
- 衣裳:鈴木文次郎
作品データ
- クレジット:©1949/2015松竹株式会社
- 製作年:1949年
- 公開日:1949年9月13日、2015年11月25日(4Kデジタル修復版・ワールドプレミア)
- 製作国:日本
- 配給:松竹
- 上映時間:108分
- 映倫区分:G
- 受賞歴等:第23回キネマ旬報ベストテン1位(1949年)、第4回毎日映画コンクール日本映画大賞・監督賞・脚本賞・女優演技賞
- 英題:Late Spring
ゆかりの地図
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