羅生門

京都府京都市・長岡京市、奈良県奈良市

作品概要

©KADOKAWA1950

世界を驚かせた人間の心の謎への挑戦。1951年ヴェネチア映画祭で最高賞(金獅子賞)を受賞し、占領下の日本を大いに元気づけた日本映画の至宝。

第32回東京国際映画祭
映画祭上映

ストーリー

平安時代。土砂降りの雨に煙る羅生門の廃墟で旅法師(千秋実)と杣売り(志村喬)が首を傾げていた。走り込んで来た下人の問いに答えて2人は不思議な話を語り始める。都で名高い盗賊・多襄丸(三船敏郎)が森の中で武士の夫婦(森雅之・京マチ子)を襲い、夫を殺した。だが検非違使庁での3人の証言は全く言っていいほど異なっていた…。

地域・建築ばなし・プロダクションノート

映画製作の始まりは、姫路の自転車会社の経理係が、芥川龍之介の短編「藪の中」を200字詰め原稿用紙93枚の短いシナリオにまとめたことでした。これが偶然にも黒澤明の目にとまり、その経理係を東京に呼んで検討を始めました。その経理係こそ、脚本家の橋本忍です。

1950年6月26日にクランクイン、7月7日から奈良の奥山、7月17日から光明寺、8月17日にクランクアップしています。(撮影監督・宮川一夫の覚え書きによる)

1951年(昭和26年)9月9日、第12回ヴェネチア国際映画祭で最高賞「金獅子賞」受賞のニュースが日本に転がり込んできました。サンフランシスコ平和条約調印されたのは、1951年(昭和26年)9月8日午前10時(日本時間9月9日午前2時)なので、同じ日になります。(ちなみに、サンフランシスコ平和条約発効は1952年4月28日です。この日、約7年間におよんだ占領が終結し、日本は主権国家として独立を回復しています。)

京都府京都市にあった「大映京都撮影所」に「羅生門」と「検非違使庁の白洲(邸宅の庭に白砂を敷いた場所)」のオープンセットが作られています。

「羅生門」のストーリー上のモチーフとなったのは、平安京の南端に建っていた都の正門「羅城門」です。「羅城門」は、中世からは「羅生門」という表記が一般的になっています。

大映京都撮影所の敷地内に建てられた「羅生門」オープンセットは、原寸大でした。間口33m、奥行き22m、高さ20mに及ぶ大きさです。オープンセット建造には、約1か月をかけ、延べ2,000人が動員されています。

オープンセットの美術考証は、東寺「南大門」と東福寺「三門」です。美術監督の松山崇は、「建築様式が酷似している東寺の門に教えられるところが大だった」と述べています。

東京都府中市「東郷寺」山門が、映画「羅生門」のモデルになったという新聞記事がありますが、映画制作サイドの資料には、そのような記述はありません。

東寺(教王護国寺)「南大門」は、切妻造本瓦葺で、国指定重要文化財です。

東福寺「三門」は日本で最古、禅宗で最大級の三門で国宝に指定されています。

「羅生門」オープンセットは、巨木18本で主要舞台を構築してます。

「羅生門」オープンセットの瓦は「延暦十七年」と彫り込んだ木の瓦です。約4,000枚の瓦が木で作られています。(「毎日グラフ 1950年8月1日号」に「当時の年号をきざんだ瓦はすべて木の瓦である。」と写真付きで紹介されています。)

ちなみに、「大映十年史(昭和26年11月1日発行)」には「また瓦は四千枚を焼き、わざわざ延暦十七年という年号を彫りつけるという凝り方」といった記述があります。しかし、オープンセットの瓦の重さを考えると、おそらく木で作られた瓦であると考えられます。しかし、木の瓦を、焼いた瓦に見せるため、なんらかの加工をしていると思われます。(今後、調査研究のうえ、明らかになった場合は、本サイトでお知らせいたします。)

「羅生門」での土砂降り雨シーンでは、消防車3台で激しい雨を降らせています。

森のシーンは奈良県奈良市の「春日奥山」(奈良市街の東部エリア)・「春日山原始林」(春日奥山エリアにある)でロケーション撮影されました。

春日山原始林は、春日大社の聖域として守られ、世界文化遺産「古都奈良の文化財」の一部になっています。

京都府長岡京市「西山浄土宗総本山「光明寺」横の雑木林、付近の竹林でロケーション撮影されました。

撮影と録音において、それまでの日本映画にはない型破りな手法が行われています。自然光を活かすため、「レフ板」を使わずに「鏡」を使ったり、当時はタブーであった、太陽に直接カメラを向けるなどの手法です。それらにより、モノクロ映像の美を映し出しています。 録音もロケーション撮影はアフレコという当時の常識に反して、森の中でも同時録音が行われています。(同時録音だけでなく、アフレコも行われています。)

2008年に角川映画は映画芸術科学アカデミーと東京国立近代美術館フィルムセンターとの共同事業でデジタル復元を行っています。

2019年、第32回東京国際映画際「日本映画クラシックス」で上映されました。

※ロケ地について( 参考文献)
「公開70周年記念 映画『羅生門』展」

ロケ地:都市・地域・施設(建築物・土木構造物)

京都府
京都市
長岡京市:西山浄土宗 総本山「光明寺」横の雑木林、付近の竹林

奈良県
奈良市:春日奥山・春日山原始林

【スタジオ】
京都府
京都市「大映京都撮影所」

【「羅生門」オープンセットの美術考証】
京都府
京都市:東寺「南大門」、東福寺「三門」

映画にちなんだもの

羅生門、藪の中、心の謎、平安時代、侍、盗賊、杣売(そまうり:焚き木売りのこと)、旅法師、赤子

映級グルメ

映画に出てくるグルメ:岩清水/石清水(いわしみず:岩の間からわき出るきれいな水)

キャスト

三船敏郎、森雅之、京マチ子、志村喬、千秋実、上田吉二郎、加東大介、本間文子

スタッフ

作品データ

ゆかりの地図

東寺「南大門」
東寺「南大門」

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